議会改革白書
議会改革白書2014年版 議会改革の成果とマネジメント
編著 廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム
生活社 2014年11月28日発行 本体3,500円 A4判 256ページ

議会改革の成果とマネジメント

議会で未来をつくれるか? 議員立法とマネジメント 対話型議会報告会の展開 市民と議会の対話をどうつくる?
議会改革のこれまでとこれから 行財政縮小時代と自治体議会 議会改革の今を読み解く
議会調査(2014) 議会基本条例条文の傾向と改正内容分析 ほか



お申込みは、自治体議会改革フォーラム(info@gikai-kaikaku.net) まで。
ご注文品名、冊数、お届け先、請求書宛名、その他、必要書類等をお知らせください。

市民と議員の条例づくり交流会議・会員は、会員価格にてお求めいただけます。
年会費の納入をご確認の上、会員であることをご明記ください。

はじめに
 2006年5月に栗山町議会基本条例が制定されてから8年余が経過した。その後3度目の統一自治体選挙が来春に行われることになる。毎年100以上の自治体で議会基本条例が制定され、ほぼ同じペースで議会報告会を開始する状況が現在も続いている。その一方で、2014年夏以降、相変わらずという印象のある議員の不祥事の多発が報道された。それに関する解説などには、この間の議会の改革への認識はほとんどないことが現れていた。残念ながらこれもまた、議会改革をめぐる厳然たる事実である。実際の議会改革は進んでいるものの、議会関係者や特に関心を持っている者とそうでない者との間に、認識や情報の大きな落差があり、それを埋めるという点では、まだ成果が得られていないこと、あるいは実体的な改革が進んでいる分だけその落差が拡大しつつあることが、ここには示されている。

 議事機関であって執行機関ではない自治体議会における改革とは、つまるところ意思決定のプロセスの改革である。議会報告会など、それまでには行われなかった活動が行われていることは見えやすいが、それもあくまで議会が自治体の意思決定を行っていくプロセスの一部分であって、実体的な公共サービスに直接関わるわけではない。その結果、議会が改革にともなって実行し始めた新しい取り組みが、直接何らかの実体的な成果を達成するというような関係が見えない。

 これは議会の本質に根ざした制約条件であって、改革努力をどのように重ねたとしても、根本から払拭してしまうことができるわけではない。とはいえ、議会政治は市民と代表機関の関係性の中で展開され、成果が得られるものであることも動かすことの出来ない本質である。議会の改革が、自治体の意思決定の向上に何らかの形でつながっていることが市民に実感されなければ、良い議会政治は実現できない。その本質において見えがたい議会政治の成果を、実感してもらうための努力が、議会改革には求められているのである。

 今年の議会改革白書が取りあげた取り組みは、計画、検証、対話に関するものが軸となっている。

 人口減少に伴って、自治体の行財政が利用できる資源が縮小していく中で、これまでの自治体政策の見直しと再編を実行していかない限り、増加するさまざまな公共サービス需要に対応していくことはできない。自治体全体の将来像を、得られる資源の範囲内で何とか実行していくめどをたてることが、これからの自治体計画には求められる。将来目標の実現という性質の濃い計画と、縮小再編の中で維持すべきものを絞り込みつつ持続できる自治体の姿を追求する計画の両面から検討している。議会はその計画策定の主体としてどのように取り組んでいくことができるのか。単に議決するということだけでなく、議決に至るプロセスが問われている。

 検証については、立法機関(政策の立案と決定の主体)としての議会の自己点検を取りあげている。期待される議会活動の成果のひとつは、評価・検証を通しての政策改善である。議会が自ら政策立案に取り組む場合にも、チェック機関としての議会の役割は変わらず期待されているはずである。議会が政策の立案主体としての役割を拡大していくことにともなって、議会の自己検証という役割も拡大していくことが求められているのである。その取り組みが、政策主体としての議会に対する信頼の強化にもつながっていくことだろう。

 議会の意思決定プロセスにおいて、市民との対話は新しい試みであり、その経験が十分に共有化されているとは言い難い段階にある。一部の議会で導入され始めた、対話型の議会報告会や、まちづくりなどの現場で重ねられてきている対話の技術は、これからの議会改革の展開の中で、益々の普及が必要とされているものである。

 情報の集約を重ねてきた議会運営の実態調査と議会基本条例の制定状況調査については、定点観測としての役割を維持しつつ、条例の見直し、修正など、一定の時間の経過のなかで浮上してきた次のステップの実態を確認できるように考慮した。議会基本条例時代の議会改革が、いよいよ第二ステージに入ってきたということがここには示されている。

 来春に統一自治体選挙を控えた現時点で、あらためてそれぞれの改革の次のステージを、明確な達成目標の設定を含めて具体的に構想することが求められている。その作業のための参考として、さまざまな現場で本書が役立てられることを期待したい。

2014年秋 編者を代表して 廣瀬克哉

目 次
第1章 議会改革のこれまでとこれから  
巻頭提起 議会改革のこれまでとこれから
  自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表 廣瀬 克哉

第2章 議会改革の成果とマネジメント  
テーマ1 議会で未来をつくれるか? 
長崎県小値賀町議会 議会版「総合計画づくり」
  小値賀町議会議長 立石 隆教

北海道芽室町議会 政策形成サイクルと議会発「公共施設マネジメント」
  芽室町議会事務局長 西科 純

テーマ2 議員立法とマネジメント 
三重県議会 議員提出の政策条例の検証、見直し
  三重県議会事務局

大分県大分市議会 政策条例の策定と議会の評価・提言活動
  大分市議会議員政策研究会会長 阿部 剛四郎

テーマ3 対話型議会報告会の展開 
福岡県大刀洗町議会 議会報告会を「授業型」から「対話型」へ
  大刀洗町議会議員 林 威範

岐阜県白川町議会 ワールドカフェでつながる「議会懇談会」
  白川町議会議会活性化検討特別委員会委員長 渡辺 昌俊

神奈川県鎌倉市議会 議会の信頼獲得に資する「オープンミーティング」
  鎌倉市議会議会基本条例の制定に関する調査特別委員会委員長 高橋 浩司

テーマ4 市民と議会の対話をどうつくる? 
議会報告会で市民との対話を成功させるヒント
  ─鎌倉市議会「オープンミーティング」を事例として
  一般財団法人地域開発研究所 牧瀬 稔

立場の違いを乗り越える信頼の場づくりとは
  ─まちづくり志民大学「議員と語ろう!ワールドカフェ」の実践から
  NPO法人地域交流センター理事/ファシリテーター 山口 覚

北海道鹿追町議会 「お待ちしています」から「お伺いします」
  ─少人数で対話に出向いていく「まちなか会議」
  鹿追町議会広報広聴常任委員長 加納 茂

第3章 議会改革の現段階と問題提起  
テーマ1 行財政縮小時代と自治体議会 
公共施設・除却の行政計画と議会
  公益財団法人地方自治総合研究所非常任研究員 菅原 敏夫

議員間討議の広がりと今日的課題
  法政大学兼任講師 岡﨑 加奈子

議会報告会が提起する議会そのものへの問
  法政大学教授 細井 保

「公共施設等総合管理計画」策定における住民と議会の役割
  長野県短期大学助教 野口 暢子
テーマ2 議会改革の今を読み解く 
議会基本条例の変化・展開を考える─「改正内容」の分析から
  首都大学東京准教授 長野 基

条文分析 2013年制定の議会基本条例に見る議会改革の動向
2013年制定の議会基本条例に見る議会改革の動向比較表
  首都大学東京准教授 長野 基

「政務活動費」に関する考察
  行政書士/元三鷹市議会副議長 髙井 章博

第4章 全国自治体議会運営実態調査 結果報告2014  
全国自治体議会の運営に関する実態調査2014 調査結果概要
全国自治体議会の運営に関する実態調査2014 集計表
全国自治体議会の運営に関する実態調査2014 回答自治体一覧表

資料編 議会基本条例の現在 
資料編「議会基本条例の現在」
議会基本条例の改正内容(2006-2009年制定/ 25条例)
議会基本条例条文集(2013年中に制定された条例より抜粋)